(報われぬ国 負担増の先に)自治体の社福関与

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社会福祉法人に対する是正の動きは、お隣の市川市では本格化してきました。以下詳細引用です。やはり、市民レベルの追求が引き金のようです。

2014年9月8日05時00分 Asahi

 ◇第2部

  • 特集・報われぬ国
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福治会の理事長が「市職員につくってもらった」と主張する法人設立認可申請書

その紙には、次の理事長など役員候補が並んでいた。

大阪府東大阪市の市役所で2月3日、5人が机を囲んだ。市内で特別養護老人ホームなどを運営する社会福祉法人「川福会」の当時の西出泱(ひろし)理事長(72)ら3人、市の福祉部指導監査室長ら2人だ。

改選期を迎える川福会の役員人事を相談するためだった。川福会が理事長の再任などを伝えると、室長は「就任依頼候補」と書かれた紙を出してきた。

理事長を含め、13人の役員のほぼ半数を変える案だった。筆頭には大阪市で社福理事長を務めるホテル運営会社会長が挙げられ、弁護士や東大阪市福祉部長らが続いた。

「独立した法人の人事に市が介入できるのか。なぜ突然、ホテル経営者なのか」。反発する川福会と市の話し合いは数時間続き、どちらも譲らなかった。

そもそもの話は3年近く前にさかのぼる。

2011年11月、市は川福会に運営を改めるよう指導し、元福祉部長の西出氏ら3人を「仮理事」として送りこんだ。川福会をつくった一族が、理事会などを開かずに役員を決めるような問題があったからだ。

仮理事らは翌年3月に正式な理事になり、西出氏は理事長に就いて立て直しを進めてきた。今後もこの体制を続けようとした矢先の市からの人事案だった。

これに対し、川福会は西出氏が退き、大阪市OBを次の理事長にする対案を示した。だが、東大阪市はホテル経営者を理事長にすることにこだわった。

「議案を決めるにも市と事前協議ができず、市の意向が反映されない。信頼関係がない」。自らも役員候補だった西田康裕・福祉部長はそのときの理由をこう話す。

西田部長によると、人事案は担当副市長、市長と決めた。「人間関係の中から、ホテル経営者が浮上した」という。

■明確ルールなし

今年3月、川福会では理事などの役員を決める「評議員会」が数回にわたって開かれた。

オブザーバーとして出席した西田部長は当初、市の人事案を示し、「施設の改修も踏まえ、建設関係の知識もあるような方でないと。社福も運営し、見識を持っている」と説明したという。受け入れられなければ、市が川福会に委託している事業をこれからも続けるのは難しいと迫った。

「そこまでして推す人なのか」。疑問の声が上がる一方、市との関係修復を求める声も出て、ホテル経営者は理事に就いた。

ただ、3月末、理事のなかから理事長を選ぶ理事会では、川福会が提案した大阪市OBが多数決で新しい理事長に決まった。

なぜ、市はそこまで人事に介入したのか。朝日新聞の質問に対し、西田部長はこう答えた。「以前は議案の上げ方まで助言しないといけなかったので、市の関与を求められた。いずれ手を引くが、どこまでかかわるのかを判断するルールが整備されていない」

■「市の指導通り」

市の判断は、補助金でも大きく働く場合がある。「問題はないと思ってやってきたのに」。千葉県市川市で二つの保育園を運営する社福「福治会」の福田亨理事長(63)は、市への不信感を訴える。

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市川市 「過大に補助金」返還求める

市は昨年11月、保育園の運営のために出している補助金のうち、福治会が08~12年度に合わせて約7200万円を過大に請求していたと発表した。このうち約3300万円を返すよう求め、返さなければ訴訟も検討する構えだ。

市によると、保育士らが昼に働いた分を「延長保育分」として請求したり、保育士の資格がない職員の給料分まで請求したりしていたという。

福田氏は返すのを拒否している。こうした請求は福田氏が04年に保育園を開いてから続けてきたが、ずっと市からの指導はなく、認められてきたからだ。

ところが、昨年春、担当職員が請求に問題があることに気づいて「13年度から見直す」と言ってきた。やりとりを知った市議が「福治会への補助金は問題」と指摘し、市は過去の補助金の調査に乗り出した。

その結果、市は福治会に補助金の一部を返すよう求めるとともに、「過大請求を見逃した」などの理由で担当職員15人を処分した。

そもそも補助金はなぜ認められてきたのか。この経緯をめぐって、福田氏と市は争っている。

福田氏はもともと市職員だった。福田氏によると、農家で土地があったこともあり、03年に保育担当部長から保育園の運営を持ちかけられたという。

「社福をつくって保育園を開くための申請書類の一部も担当課につくってもらった。補助金の請求の仕方は、保育園を開いて間もなくのころ、市の担当職員に指導された。給料として払い、別の事業に流用したり、私腹を肥やしたりしたわけではない」。こう主張する。

一方、市は昨年11月の市議会で、補助金請求を指導したという話を否定した。この問題を指摘した市議は朝日新聞の取材に対し、「社会福祉法人の理事長が、補助金の仕組みを『知らなかった』では通らない」と話す。

(大宮司聡、松田史朗)

■「社福は下請け」の意識も

社会福祉法人は戦後の1951年、生活に困っている人などを救済するためにつくられた。

東京都三鷹市の元職員でNPO法人の日本地域福祉研究所理事をする高橋信幸氏は「当時、政府が社会福祉を事業とする民間に助成するのは禁じられていたため、社福は役所の『下請け』の役割を担った」と話す。

こうした背景から、都道府県や市などは特別養護老人ホームには建設にかかわる補助金、保育園の運営にも運営費や建設補助金を出す。さらに社福をつくる認可、特養や保育園などの認可を決める権限を持ち、その運営をチェックする役割もある。権限は大きい。

しかし、介護保険が始まった00年ころから、社福を取り巻く環境は変わった。社福は自治体が主導する福祉を担う役割から、利用者と契約を結んで介護サービスなどを提供する存在になった。企業も介護や保育などに参入し、サービスを競うようにもなった。

それでも、認可や補助金、指導、人事などを通じて、自治体が社福にかかわる関係は続いている。首都圏で保育園を運営する園長は「役所は法人の認可と指導の権限を両方持っており、逆らえばやっていけなくなる」と明かす。

高橋氏は「市町村には福祉の経験が少ない職員も多い。役所と社福がもたれ合う時代は終わったのに『社福は下請け』という意識が残っているのではないか」という。今後は、自治体が社福にどこまでかかわるかのルールづくりが必要になる。

■社会福祉法人(これまでの連載から)

写真・図版 全国に2万法人近くあり、特別養護老人ホームや障害者施設、保育園など約16万カ所の施設の半分近くを運営する。福祉や子育ての拠点で、お金もうけを目的にしない非営利団体だ。法人税や固定資産税が免除され、一部で補助金が出たり介護報酬を受け取ったりしている。しかし、一部の理事長らが勝手に運営権を売る「社福売買」、親族に仕事を回す「ファミリービジネス」などの私物化もみられる。

◇「報われぬ国」は原則として月曜日朝刊で連載します。ご意見をメール(keizai@asahi.com)にお寄せください。

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