(報われぬ国)認可保育園、社福が独占 保育の質を訴え

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2014年8月3日05時00分 Asahi

写真・図版写真・図版大阪市中心部でも今春から企業による認可保育園がオープンした=大阪市西区のアスク南堀江保育園、北川慧一撮影

写真・図版 東京のベッドタウン、町田市には子育て世代が多く住む。午後7時ごろ、繁華街近くのビルに20~30代の親たちが訪れる。2階にある「認可外保育園」に預けた子どものお迎えだ。

 共働きの男性会社員(28)は3歳の長女を車で迎えにきた。車には1歳の次女が待つ。次女は「認可保育園」に通うが、長女は空きがなかった。次女の保育料は月2万円ほど。長女の保育料は月5万円以上かかる。同じ認可保育園だったら割引があって2人で月3万円ほどで、送り迎えも楽だった。

長女の認可外保育園は東京都の2月の立ち入り検査で、避難設備などが「不適切」と指摘された。「認可外だと不安。しっかり認可保育園を整備してほしい」。男性会社員は漏らす。

町田市では、認可保育園を希望しても入れない待機児童が今年4月に203人いた。2011年の435人からは半分に減ったが、親の不安は消えない。

「次の選挙で落とすぞ」 12年12月、町田市議会の傍聴席からヤジが飛んだ。

地元の保育園協会が市議会に提出した「営利企業参入を撤回するよう求める請願」の質疑で、ある市議が企業の参入を認める発言をしたときだ。ヤジを飛ばしたのは、社会福祉法人(社福)が運営する保育園の男性園長だった。

町田市は認可保育園の運営を社福に限ってきたが、11年に社福に増設を募ったところ応募がなかった。このため、12年度から企業にも運営を認め始めた。

実は、町田市では近年まで社福の間でルールがあった。「1法人が運営する認可保育園は2カ所まで」。1990年ごろ、保育園協会が申し合わせたという。

「将来は子どもが減る。一部の社福がたくさん保育園をつくれば、競争が激しくなって小さい社福がつぶれてしまう」。元協会長はいきさつをこう説明する。

いまも社福は1法人あたり多くて3カ所の運営にとどまり、市内67カ所の認可保育園のうち企業は1カ所だけだ。ある保育園長は「園を増やす意欲があっても、申し合わせで身動きがとれなかった」という。

■市OBを受け入れ

認可保育園の「社福独占」は続いてきた。大阪市では、二つ写真・図版の社福の規模が飛び抜けている。

04年、市は市立保育園の一部の運営を民間に委託し始めた。10年に公募するようになるまで、実績を買われて独占的に引き受けたのが「なみはや福祉会」と「みおつくし福祉会」だ。6年間でそれぞれ17カ所と4カ所の運営を任された。

なみはや福祉会は、市内の保育園が集まる大阪市私立保育園連盟がつくった。「行政の職員は事務能力が高い」として、大阪市職員のOBも受け入れてきた。今年4月で、市内の認可保育園405カ所のうち最も多い36カ所を運営する。私立保育園連盟の近藤遒(つよし)会長は「保育に効率性を求めてはいけない。企業が参入しないのは当たり前だと思ってきた」と強調する。

みおつくし福祉会は15カ所の認可保育園を運営し、市内で2番目に多い。過去の理事長やいまの常務理事などには、大阪市幹部の経験者が就いてきた。

「市のOBを受け入れるのは仕事を受けるためではないか。だが、それでは競争がなくなる」。市の特別顧問も務める鈴木亘(わたる)・学習院大教授はこう指摘する。

一方、市内の待機児童は12年4月にピークの664人に達した。市は13年度に企業の参入を認め、今年4月に企業が運営する保育園が9カ所できた。待機児童数は210人に減った。

大阪・難波の繁華街にほど近いビルに企業の日本保育サービス(本社・名古屋市)が開いた認可保育園がある。玄関を入ると、0~5歳の年齢別に部屋が仕切られ、約50人の子どもたちが遊ぶ。保育料は安く、保育士数なども基準に従う。市幹部は「社福に探せないような場所にも、企業は保育園をつくれる」と感じる。

■企業参入、親不安も

名古屋市は6月に認可保育園を募ったとき、初めて企業の応募も認めた。それまでは社福の応募が少ないときだけ認めていた。社福を中心につくる名古屋民間保育園連盟の伊東世光(せいこう)会長は疑問の声をあげる。「子どもは地域で育つ。地域に根づいた社福に任せてほしい。企業の参入で保育の質が低下する心配がある」

市議会でも、自民、公明、民主などの市議30人でつくる保育議員連盟が企業の参入に慎重だ。議員連盟は保育園連盟と密接な関係を築き、昨年も保育士の待遇改善のための補助などを市に求めて実現させた。市議選になれば、保育園連盟が推薦を出してきた。

企業の参入には親の不安もつきまとう。

東京都世田谷区は今年4月の待機児童が1109人。昨年から企業に認可保育園参入を認めている。これに対し、世田谷保育親の会は、質を確保するため「保育士が短期間で入れ替わるのを避ける」「保育で得た収益をほかの事業に使わないかチェックする」などを厚生労働省や区に求めた。

保坂展人区長はこう指摘する。「保育は高い収益が上がる事業ではない。子どもの生涯に影響を及ぼすため、厳しくみる必要がある。社会福祉法人であれ企業であれ、しっかりした保育をできるかが問題だ」

(加藤裕則、北川慧一)

■保育の質確保し待機児童解消を

認可保育園に入れるなら入りたいという潜在的ニーズを持つ家庭は約85万世帯にのぼる、という試算もある。子育て世代のため、保育料が安い認可保育園を増やすのは最優先課題だ。

企業の参入には「保育の質の低下」「倒産の危険」などの心配がある。だが、認可保育園に入れない子どもは結局、企業などが運営する認可外保育園に入り、親は保育料などの負担が重くなったり事故への不安を抱えたりしている。

「保育の質」「適切な運営」「保育士の労働環境」のチェックや透明性を高め、企業も含めて認可保育園を増やせないか。大切なのは待機児童をなくし、親の負担と不安を減らす取り組みだ。

(北川慧一)

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