社福法人に天下り239人 昨年度、都府県・指定市幹部ら

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2014年9月15日05時00分 Asahi

特別養護老人ホームや保育園などを運営する社会福祉法人(社福)に、都府県や政令指定都市から昨年度内に少なくとも計239人の幹部職員らが再就職していたことがわかった。自治体には社福に補助金を出すなどの優遇をしたり福祉事業を委託したりするところがあり、全国の社福のなかで一部が職員の天下り先になっている。▼4面=連載「報われぬ国」

朝日新聞は47都道府県と20政令指定都市の67自治体について、2013年度に社福に再就職した職員数を尋ねたり公表資料を調べたりした。このうち北海道など5自治体は調査や公表などをしていなかった。回答や公表があった62自治体のうち、57自治体では課長級以上の職員らが退職後に社福や施設の幹部などに就く例があった。福祉担当の職員が多いが、関係のない担当の職員もいる。宮崎県など5自治体はゼロだった。

再就職が最も多かったのは名古屋市の15人。このうち7人は、特養などを運営する「なごや福祉施設協会」の理事長や施設長などに就いた。協会は市が中心になって設立した経緯から、特養12カ所の施設長はすべて市OBが務めている。協会は「設立して20年余りで管理職クラスが十分に育っていないため」と説明する。

京都市は11人いた。このうち3人は保育園などを運営する「京都社会福祉協会」の事務局長や保育園長に就いた。市がつくった保育園の運営を委託されていたこともあり、市OBの受け入れが続いている。

協会は「管理職経験がある市職員は、労務管理や対外折衝ができる。広い視野で組織を活性化させるためにも、市OBの採用は意味がある」と説明する。

自治体職員が再就職した社福のうち最も多かったのは「社会福祉協議会」(社協)で、2割強の54人にのぼる。社協はすべての都道府県と市区町村にあり、在宅介護の支援や一人暮らしの高齢者の支援、障害者の自立支援などを進めている。地域の福祉活動の拠点だ。

「社会福祉事業団」も25人と多かった。全国に約130あり、自治体から委託を受けるなどして特養などの福祉施設を運営する。

これらの社福は自治体との協力や委託が多く、自治体職員の経験も生かしやすい。一方、上智大の藤井賢一郎准教授(社会福祉学)は「NPOやほかの法人でもできる福祉サービスを、自治体が職員の再就職先の社福を優先して委託したとみられる例もある。予算の無駄づかいやサービスの質の低下につながる可能性もある」と指摘する。

(生田大介、加藤裕則)

◆キーワード

<社会福祉法人> 全国に2万法人近くあり、特別養護老人ホームや障害者施設、保育園などの施設約16万カ所の半分近くを運営する。お金もうけを目的にしない非営利の民間団体で、法人税や固定資産税が原則免除される。一部の自治体が施設建設に補助金を出すなど行政との関係が強い法人もある。

■社会福祉法人に再就職した職員が多い自治体

人数 自治体名

15 名古屋市

11 京都市

8 川崎市

7 山形県、山梨県、愛知県、大阪府、仙台市、大阪市、福岡市

6 新潟県、岡山県、鹿児島県、横浜市、相模原市

5 東京都、神奈川県、石川県、滋賀県、高知県、広島市、北九州市

(朝日新聞調べ。対象は2012年度に自治体を退職し13年度に再就職した人。主に課長級以上)

報われぬ国 負担増の先に)社協の課題 人・カネ、行政頼り

滋賀県高島市の社会福祉協議会は学生ボランティアと交流し、災害があると駆けつけてもらう=松浦新撮影        写真・図版

◇第2部▼1面参照

8月のある朝、名古屋市の中心部にあるホールに350人ほどの高齢者がつめかけた。市が高齢者向けに開く「高年大学 鯱城(こじょう)学園」の納涼健康講座だ。

写真・図版この日は、難病を抱えた女性の生涯をつづったベストセラー「1リットルの涙」の患者の主治医が講演した。

学園では、年間4万8千円で一般教養や陶芸などを学べる。開校以来、名古屋市社会福祉協議会(社協)が運営・管理し、いまは市から年間約9千万円を受け取っている。

2011年、この学園は名古屋市が予算を絞り込むための事業仕分けの対象になり、市民代表らによる外部評価では「コストが高い」「民間のカルチャーセンターで十分だ」などと指摘された。仕分けの判定は「廃止」だった。

弁護士などによる市の包括外部監査でも、公立高校の教員OBが就く「教授」の厚遇ぶりが問題になった。教授は10人いて、1人あたり年間約30コマの授業を受け持っていた。

報酬は年間約390万円。1コマあたり約13万円の報酬になり、1コマあたり1万円ほどの大学の非常勤講師に比べて「高すぎる」と指摘された。

しかし、12年に市の社会福祉審議会は「高齢者が社会貢献活動をするための学びの場になっている」と評価し、存続が決まった。

教授たちは、授業をせずに講師を選ぶなどの調整にあたる「コーディネーター」になった。報酬は年間50万円下がり、人数も8人に減ったが、おもに教員OBを受け入れることに変わりはない。

昨年、学園の運営・管理者の選び方にも市議会で疑問の声があがった。4年に一度の選定で募集要項に「老人クラブと共催して行うなど、地域団体と連携して実施する内容を含めてください」とあり、応募は市社協だけだったからだ。

「こんな取り組みができる団体に、社協以外にどんな団体が想像できるのか」。市議の指摘に、市幹部は「今後の募集要項は、ご意見を踏まえて対応する」と述べた。

公共施設の管理業務は市社協の財源の柱の一つになっている。市の福祉会館や児童館の多くは市社協や市内の各区社協が管理を任され、館長には市職員OBが再就職している。

■「民間」なのか

「『民間の福祉団体』として紹介しながらも、人的資金的には区に対する依存状況が見受けられる」

今年2月、東京都江東区の事業を公認会計士などがチェックする包括外部監査で、こんな疑問が江東区社協に投げかけられた。

厚生労働省によると、社協は都道府県と市町村ごとにつくられ、地域の福祉団体などをまとめながら地域福祉を推進する役割がある。ただし、社会福祉法人(社福)なので、あくまでも民間団体だ。

ところが、活動のための財源をみると、自治体からの補助金や委託金が多くを占める社協が目立つ。

江東区社協は財源の約9割を区から受けている。そんなかかわりもあり、課長以上の管理職5人はすべて区からの出向かOBだ。

区職員OBの須田雅美・常務理事兼事務局長は「財源の約9割が区の予算の統制下にあるなかで、区職員が管理職にいたほうが仕事は回りやすい」と話す。

一方、生え抜きのある職員は言う。「福祉の経験がなく、数年で異動するのを待つだけの人もいる。区の意向ばかりで、現場の声をなかなか聞こうとしない」

江東区社協のトップの会長も山崎孝明・江東区長が務めている。山崎区長は「社協の活動は寄付で成り立っている部分があり、区長が会長でなければ寄付が集まらなくなる」という。ただ、東京都社会福祉協議会のまとめでは、都内の62社協のうち首長が会長を務める社協は五つしかない。

江東区社協では、活動のための財源になる「地域福祉積立預金」が今年3月末で昨年より約1700万円多い約4億7千万円にふくらんだ。区からの収入のほかに、遺産の寄付などを受けてきたからだ。02年には1人で1億8千万円を寄付した人もいる。

社協は本来、自治体から委託された仕事ばかりではなく、行政で対応しきれない住民の困りごとを解決する役割が期待されている。そのための寄付だ。

しかし、江東区の包括外部監査はこう指摘する。「行政職員が寄付金を財源とする業務に携わることは少ない。区受託事業は適切に執行しつつも、不慣れな寄付金に係る事業は十分に対応できなかった可能性もある」

■交流や祭りも

8月、琵琶湖に面した滋賀県高島市の辻地区で、高屋正明さん(67)が京都市から2泊3日でボランティアにきた立命館大の学生約20人に呼びかけていた。

「あの山に桜やモミジを植えると、琵琶湖からも見えます。11月に植えるので応援してもらえますか」

この交流は高島市社協と大学が企画し、地元に住む高屋さんに案内をお願いした。学生たちは畑の雑草とりや溝そうじのほか、鳥の巣箱づくりなどもした。交流は今年で4年目を迎え、冬には雪かきもした。

交流が大きく実を結んだのは、昨年9月の台風18号による水害の時だった。高島市では床上浸水などで300棟以上が被害を受け、復旧のために延べ3千人以上の学生らがボランティアで集まった。

学生らと協力するボランティアセンターは市社協が運営した。今回の交流に参加した学生の半分もこのときに駆けつけていた。

市社協でボランティア・福祉学習センター長を務める井岡仁志(ひとし)さん(51)は言う。「少しでも知っている場所が被災すると、自然に助けに行こうという気持ちになる。地道な関係づくりが大切なんです」

福井県小浜市には「踊る社協職員」がいる。小浜市社協事務局長を務める豊永真誠(しんせい)さん(60)だ。この10月にある小浜駅前の商店街の祭りでも、ほかの社協職員たちとAKB48の「恋するフォーチュンクッキー」を踊ることにしている。

市社協は07年から、祭りの実行委員会の事務局を引き受けている。市内の40団体が参加する祭りの事務局は人脈を広げる。たとえば、市社協は「ハンセン病回復者との交流事業」を続けており、祭りに参加した高校の生徒も加わるなどして輪が広がった。

高島、小浜両市社協に共通するのは、行政からの天下りがいないことだ。

高島市社協は年間約12億円の事業収入のうち市からの収入は4%ほど、小浜市社協も約2億円のうち5%ほどだ。いずれも訪問介護などによる介護保険からの報酬が8割前後を占める。

「税金をたくさん使うと役所から人が来る。税金を預かる役所の人は公平性を大切にする。だが、社協は住民一人ひとりの願いに応じた目線で動かないといけない」。小浜の豊永さんはそう考えている。(北川慧一、松浦新)

◆キーワード

<社会福祉協議会> 社会福祉法人のひとつで、全国の都道府県や市区町村にある。NPOやほかの社福などの福祉団体と連携して国や自治体の福祉制度ではすくいきれない地域の課題解決に取り組み、その連絡調整役を担う。

たとえば、ボランティアの支援や高齢者の見守り、学童保育などをする社協がある。00年に介護保険制度ができる前からホームヘルパーを養成して派遣するなど、制度の基盤づくりもしてきた。

活動は地域や住民のニーズによって各地でちがう。

◇「報われぬ国」は原則として月曜日朝刊で連載します。ご意見をメール(keizai@asahi.com)にお寄せください。

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