老いる街、支える「見守り」 東京・山谷で考えた、地方議員の役割とは 統一地方選

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2015年4月16日 Asahi

住民と行政をつなぐ「目」と「耳」の役割は身近な地方議員に求められているが、そういった視点が基本的に抜けていないだろうか。議員になりたいからという動機の方が先行してはいないだろうか。

「ここで知り合って、よくしてもらったんだ」。青森出身の男性は遺影を前に亡き友を語る=東京都台東区の山友会事務所写真・図版

 東京・山谷。かつて「日雇い労働者の街」として知られた地域は、いま「福祉の街」と呼ばれる。病気や障害を抱える人。職や住まいをなくした人――。老い縮みゆく社会の未来が問われている統一地方選。地方議員に何が求められているのか。首都の足元で考えた。

平日の午前10時半、ボランティアの医師らによる無料診療所「山友クリニック」が開くと、20~30人がやってきた。診察を受けに来た人もいれば、診療所前のベンチで思い思いにたばこをくゆらし、言葉を交わす人も。「天気が良い日は、ここで過ごす」。近くの簡易宿泊所(簡宿)で暮らす男性(71)が言った。

19歳で青森から上京し、浅草の町工場に勤めた。その後、自衛官やトレーラーの運転手など職を転々とし、定年を迎えた。社員寮を出て山谷に来たが、仕事は見つからない。住まいを失ったため年金も受け取れず、隅田川沿いの公園で数カ月寝泊まりした。

ただで衣類をもらえると路上生活仲間から聞き、無料診療所を運営するNPO法人「山友会」の事務所を訪れた。そこで1泊約2千円の簡宿を紹介され、住民登録した。年金がもらえるようになり、投票所の入場券も届き始めた。

あれから10年。選挙のたびに投票に行った。近くの駅前で街頭演説も聞いた。でもこの間、簡宿周辺で議員を見たことはない。政治が自分にどう関わるのか、正直よく分からない。「今の暮らしがあるのは周りの人たちのおかげだから」

山友会は1984年に発足。スタッフとボランティア約90人が無料診療所の運営、簡宿などに住む約80人の生活相談や支援、路上生活者らへの炊き出しなどをしている。費用は主に寄付でまかなう。

山友会が運営する24時間ケア付き宿泊施設「山友荘」には病気や障害を抱え、ひとりで生活するのが難しい約20人が暮らす。利用料は生活保護費の範囲内で収まる月14万円程度だ。スタッフは見守りや声かけ、病院にも付き添う。

静岡出身の男性(70)は要介護3。塗装職人として都内の建設現場を渡り歩いたが、約5年前に脳梗塞(こうそく)を起こした。手足にまひが残り、車いす生活。一日のほとんどを3畳ほどの自室で過ごす。「テレビが友達」。でも表情は明るい。「いつも誰かが見守ってくれる。すごく安心だよ」

山友会理事で山友荘の施設長を務める油井和徳さん(31)は「高齢や病気などで支援を求める人は年々増えている」と話す。

都の外郭団体「城北労働・福祉センター」によると、日雇い労働者の高齢化や働く場所の減少に伴い、山谷地域の簡宿の宿泊者は減っている。ピークの63年に約1万5千人いたが、近年は5千人弱。一方、都が2012年10月に実施した調査では、山谷の簡宿で暮らす3099人の75%が65歳以上と高齢化が目立つ。

26日投票の統一地方選後半戦で、山谷地域を抱える台東区と荒川区では19日に区議選が告示される。ともに定数32のところ、台東では40人、荒川では34人ほどが立候補する予定だ。

■<視点>住民と行政の「つなぎ役」必要

4月から生活困窮者自立支援法が施行された。生活保護に至りそうな人の相談窓口を自治体が設け、支援に取り組まなければならない。支援が必要な人と窓口をつなぐ周囲の人々の役割も重要だ。

NPO法人「自立支援センターふるさとの会」(東京都台東区)は昨年、生活困窮者を支える全国115団体の状況を調べた。支援対象者は計約1万7千人。全団体の80%が対象者への「見守り」や「声かけ」など安心生活につながる支援を実施。仲間づくりの支援など孤立の解消に取り組んでいた団体も71%あった。それでも33%が対象者の孤立死を経験していた。

調査内容を分析した川崎市の竹島正・障害保健福祉部担当部長は「専門家でなくてもできる支援の裾野を広げることが大事」と話す。より多くの生活困窮者を救うには家族を含む地域のサポートが欠かせない。

山友会の油井理事は「生活困窮者、地域で孤立している人が、なぜそうした状況にあるのかを議員に正しく理解してほしい」と話す。「政治に声を届けられない人の声も政策に反映させなければ、問題の根本解決につながらない」

必要な支援は何か。自治体の取り組みは十分か。住民と行政をつなぐ「目」と「耳」の役割は身近な地方議員にも求められている。(斎藤博美)

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