(報われぬ国 負担増の先に)介護現場の待遇 薄給、耐えられない

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内部留保は、社福の性格からいえば、診療報酬の削減という手もあるが、同時に不要な補助金のカットならびに国庫返納もしくは職員給与のUpに振り向けるなどの選択肢を持つべきかと考えられるが。

2014年10月13日05時00分 Asahi 以下転載。

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ハローワークの求人情報。介護職員は月20万円に満たない例も多い(画像の一部を修整しています)

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 ◇第2部10月上旬、新潟市内の給食会社社員らが、市内の社会福祉法人「心友会」の介護施設の一室に呼ばれた。「なぜ会社を辞めるのか。次は決まっているのか」。社員らによると、心友会の元理事長からそんな趣旨の話があったという。

給食会社は介護施設で入居者に出す食事をつくっている。創業したのは元理事長で、まだ理事長をしていた2006年ごろから心友会と契約してきた。

最近、社員の多くが元理事長の影響力が強く残ることに不満を募らせ、10月15日付で辞めようという話が持ち上がっている。ある社員は「心友会の幹部からも『給与を上げるから。冬のボーナスも増やすので辞めないで』と説得された」と話す。

■元理事長は高額

これまで社員らの給料は低く抑えられてきた。月に16万~17万円がほとんどで、高い人でも月に20万円台だったという。ある社員は「採用のときに『ボーナスは2カ月分出す』と言っていたのに、約束は守られなかった」と訴える。

給食会社だけではない。介護にあたる職員の給料も抑えられてきたという。心友会の元職員は「職員の基本給は月に十数万円で、かつては昇給もほとんどなかった」と明かす。

一方、元理事長は給食会社の社長も務めてきた。11年に社長を辞めたが、その後も給食会社の社員として残り、内部資料では、多いときで額面で月220万円の給料が出ていた。

今年3月、新潟県は心友会に対し、「給食会社との不適切な取引」などを理由に行政処分を出した。さらに5月、新潟県警は、心友会への水増し請求などの疑いで給食会社や心友会などを家宅捜索した。

朝日新聞は元理事長に「給食会社の社員がほとんど辞めようとしているのではないか」と尋ねた。元理事長は「全部辞めるとは言われていない」と話したうえで、「もう私は関係ありません」と繰り返した。

■進まない改善

介護現場では低い給料への不満が広がっている。

関西の社福に勤める女性職員は月に7、8回の夜勤をしても月給は20万円ほどにしかならない。「いくらがんばっても理事長は現場の努力を評価してくれない。給料は1年に2千円しか上がらない」と嘆く。

厚生労働省の賃金構造基本統計調査では、福祉施設で働く人の13年の平均給料は月に約21万9千円、訪問介護で働くホームヘルパーは約21万8千円だった。看護師は約32万8千円と大きく上回り、栄養士も約23万4千円と上回る。

介護職員らが入る労働組合「日本介護クラフトユニオン」では、組合員数は今年春の約6万8千人から半年で千人ほど減った。景気が持ち直してほかの仕事の給料が上がり、介護から離れた人がいるとみられる。

「組合員が減るのは初めて。組合員の平均月給は約21万3千円と低く、横ばいのままの給料で働き続けているため、慢性的な閉塞(へいそく)感がある」。染川朗事務局長はこうみている。

政府はこれまで、介護職員らの給料の改善策を打ち出してきた。だが、思うような成果は出ていない。

民主党政権時代の09年、厚労省は介護職員1人あたり月に1万5千円を事業所に補助する「介護職員処遇改善交付金」の制度を設けた。翌年の調査で、9割近い事業所が制度を使い、これらの事業所では給料が月に約1万5千円上がったという結果をまとめた。

しかし、この数字には疑問の声もある。

「交付金が恒久的に出続けないだろうとみなす運営者が多かったため、ボーナスなどの一時金で出ることが多く、本質的な待遇改善にはつながっていない」。介護現場で働いたことがあり、「感情労働としての介護労働」の著書もある昭和女子大の吉田輝美准教授はそう分析する。

厚労省の調査では、交付金は「定期昇給」「各種手当」「ボーナス」に使われることが多く、「賃金水準の引き上げ」にあてた事業所は約15%にとどまった。福祉施設で働く人の給料水準はあまり上がらず、月21万円台が続いている。

(松田史朗、大野晴香、松浦新)

■社福の収支巡り議論

来年度には、介護保険から支払われる介護報酬について3年に1度の改定がある。介護保険は40歳以上が払う保険料や税金でまかなわれており、負担を抑えながら、どう介護サービスを充実させ、介護職員の待遇を改善するかがテーマだ。

しかし、この改定をめぐり、財務省と社福がそれぞれの立場から激しく対立している。

9月末、特養などの高齢者施設でつくる全国老人福祉施設協議会が、国会近くのホテルで「これからの介護と福祉を守る1千人集会」を開いた。会場はいっぱいになり、入りきれなかった人たちが別室で中継画面を通じて見守った。

「世論は厳しい北風を吹きつけている。我が国の福祉を担ってきた社福の存在基盤を揺るがす事態になっている」。協議会の石川憲会長は危機感を訴えた。

介護福祉議員連盟などの自民党議員121人も参加し、議連会長の野田毅衆院議員が「決起大会、危機集会をしっかり受け止めて、これからの活動に反映していきたい」とあいさつするなど、議員らが次々に発言した。会場からは「きょう来てくれた国会議員の方々のことは絶対に忘れません」という声も飛んだ。

社福には、社福が持つ預貯金などの「内部留保」が注目されていることへの危機感がある。これは、介護報酬などの収入から支出を引いた「収支差」などがたまったものだ。

10月8日には、財務省が財政制度等審議会(財務相の諮問機関)で、収支差を減らせば介護報酬を減らせ、介護職員の給料アップに使えると提案した。根拠になっているのは、社福が運営する特養には1施設あたり3億円を超える内部留保があるという試算だ。

特養などの介護事業者は毎年の収入に対する収支差の割合が平均8%ほどあるとも主張する。中小企業の売上高(収入)に対する利益(収入から支出を引いたもうけ)の割合は13年度は2・2%だったので、大きく上回っているという。

介護報酬はいま、全体で年間約10兆円になる。財務省の計算では、介護事業者の収支差を中小企業のもうけ並みにして6%幅下げれば、約6千億円が浮く。介護報酬から約6千億円分をいったん減らしたうえで、その一部を介護職員の給料アップなどに絞って使うことができるというのだ。

一方、全国老人福祉施設協議会は財務省の主張に反発する。今月には、加盟する特養などの収支差はゼロだという調査結果をまとめ、公表した。財務省が言うように介護報酬を引き下げれば運営が難しくなり、「介護崩壊の危機」と訴えている。

(蔭西晴子)

■社会福祉法人(これまでの連載から)

全国に2万法人近くあり、特別養護老人ホームや障害者施設、保育園などの施設約16万カ所の半分近くを運営する。お金もうけを目的にしない非営利の民間団体で、法人税や固定資産税が原則免除される。一部の社福で、理事長が勝手に運営権を売る「社福売買」や、親族企業に優先して仕事を回す「ファミリービジネス」などの私物化がみられる。

◇「報われぬ国」は原則として月曜日朝刊で連載します。ご意見をメール(keizai@asahi.com)にお寄せください。

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