有料老人ホーム 不明瞭な「料金」徴収

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2015年2月16日05時00分 Asahi

写真・図版ある介護施設の料金表。共用の新聞代や雑誌代を「教養娯楽費」として入居者から一律で徴収し、自治体から指導を受けた

  • 写真・図版

◇第3部 療養不安

 わずか3カ月あまりの入居で約260万円を失った。「なけなしの老後資金だったのに」。関西に住む70代男性は悔しがる。

昨年、有料老人ホームに入った。まだ介護が必要ではなかったが、ひとり暮らしを続けることへの不安があったからだ。

入居のときに支払う一時金=キーワード=は1千万円と高額だった。だが、ホーム側にこう言われ、安心したという。「入居から3カ月以内ならクーリングオフができます。体験入居のつもりで入られてはどうですか」

クーリングオフは消費者を守るため、一定期間内なら無条件で解約できる制度だ。有料老人ホームは、入居から3カ月以内の解約なら、その間の家賃や利用料を除いて入居一時金を返すよう義務づけられている。

男性はホームでの生活になじめなかった。食事がおいしく感じられず、お風呂も週2回しか入れない。レクリエーションなど団体活動も苦手だった。

そこで入居から2カ月半たったころ解約を申し入れた。だが、予想外の答えが返ってきた。

「クーリングオフには応じられません」。解約は、退居日の1カ月前までに伝えるのがホームの「決まり」だという。

男性は解約が先延ばしされ、退去したときには入居から3カ月が過ぎていた。一時金から入居中の家賃や利用料、さらに20%分が引かれて返金された。

だが、これは老人福祉法に基づくクーリングオフに違反している疑いがある。ホームは3カ月以内なら入居者の解約にいつでも応じなければならないからだ。

■相談は年600件

国民生活センターによると、有料老人ホームに関する相談は年間600件ほどあり、一時金をめぐるトラブルや相談も少なくない。

老人ホームを運営する会社が倒産すれば、返ってくるはずの一時金が返ってこなくなるおそれもある。

昨年秋、長野県で有料老人ホームなどを運営する会社が民事再生法の適用を申請して経営破綻(はたん)した。高齢者施設が増えて競争が激しくなっていたという。

入居者128人が「保証金」として払い込んでいた一時金などは約5億円にのぼる。本来は退去の際に戻ってくるはずのお金だが、その大半が返されなくなる可能性があるという。

2006年4月以降にできた有料老人ホームは、万一に備え、入居一時金のうち最大500万円を保全することが義務づけられている。だが、13年の厚生労働省の調査では一時金をとっていたホームの12%が保全していなかった。06年3月までにできたホームでは63%が保全していなかった。

帝国データバンクの調べでは、ホームなどを運営する老人福祉事業者の倒産は13年に過去最高の46件あり、14年も45件だった。同社は「今後も破綻により入居者の一時金が脅かされる例が出るのでは」とみる。

有料老人ホームに入ると、月々の家賃や食費などの利用料、介護保険が適用される介護サービスの自己負担分などがかかる。それだけではない。ほかにもいろいろな費用がある。

■2カ月18万円

「上乗せ介護費用」もその一つだ。有料老人ホームは入居者3人に介護職員(看護師も含む)1人の配置が義務づけられているが、さらに手厚い配置をするホームではその分の人件費が上乗せ費用としてかかる。介護保険は使えず、入居者が負担する。

東京23区内の有料老人ホームにいた女性(88)は、一昨年払った上乗せ費用にいまも納得できない。

入居して半年後、肺炎にかかるなどして2カ月ほど病院に入った。その期間のホームからの費用明細には、上乗せ費用が2カ月で18万円もとられていた。

「入院中はサービスも受けていないのに職員の人件費まで払わないといけないの」。そう尋ねたが、ホーム側は「入居者の都合で職員数を変えられない」として返金してくれなかった。女性はほどなくして別の施設に移った。

横浜市の男性(55)は4年前に母親(82)が有料老人ホームに入り、利用料以外の出費の多さに驚いた。まず指定の部屋用カーテンを買うよう求められた。約3万円するという。「高すぎる」と伝えると、防炎で洗えるものならいいと言われ、ホームセンターで半額以下のカーテンを買って持ち込んだ。

指定の火災保険に入るようにも言われた。安い家具しかないのに、最も安いプランでも家財補償が約180万円つき、保険料は年に7千円かかる。ホームと交渉し、知り合いを通じて家財補償ゼロの保険に入ったところ、保険料は5年で3850円で済んだ。

車いすを使う母が病院に行くときにリフト車での送迎を頼むと、片道5キロ未満で2100円かかる。結局、母を車いすから自家用車に移し、自分の運転で病院に通ったという。

■特養でも不適切な例

企業が多く運営する有料老人ホームは、介護保険外の費用に関する規制が比較的少ない。一方、特別養護老人ホーム(特養)や介護老人保健施設などは自治体から補助が出るなど公的な性格が強く、食費や居住費、介護サービス費以外の費用は多くない。

しかし、特養などでも不適切な費用と指摘される例がある。朝日新聞が東京都と20政令指定都市に、介護サービス費以外の費用で不適切などと指導した件数を尋ねたところ、12~13年度に少なくとも計683件あった。

多くが、日用品などの「その他の日常生活費」をめぐる指導だ。「歯ブラシ代は徴収して良いが、歯が少なくなった人向けの口内用ブラシは介護サービス費に含まれるので請求してはいけない」といった細かい指摘が多い。

少しでも運営を楽にしようと多めにとった例もある。

東京都内にある特養は、食事用エプロン、目やにをとるコットンの費用をとり、都から「介護サービス費に含まれている」と指導された。

「東京は人件費も高く運営は厳しい。グレーな費用とわかっていたが、一品でも多く費用をとりたかった」。特養の担当者はそう打ち明ける。

国や自治体が徴収していいかどうかを定めた基準が、周知されていない面もある。都内の特養の担当者は「どこまで徴収していいかわかりにくく、線引きが難しい」という。高齢の入居者や家族が適切な費用かどうかを見分けるのはさらに難しい。

(生田大介、本田靖明、松田史朗)

◆キーワード

<入居一時金> 有料老人ホームは入居時に多額の一時金をとる場合が少なくない。多くは、平均的な入居期間を想定し、その間の家賃などの一部を前払いしてもらう仕組み。入居期間が長くなるにつれて取り崩され、退去するときに残額があればその分が返金される。

■有料老人ホームでかかる様々な費用

(おもに要支援・要介護の入居者にかかる費用。入居一時金や月々の利用料、介護保険や医療費の自己負担分は別にかかる)

<上乗せ介護費用> 手厚く配置された介護職員の人件費

<入浴、洗濯、掃除> 週2回まで介護保険が使え、3回目から有料。クリーニングは有料

<シーツなどリネン交換> 週1回は介護保険が使え、2回目から有料

<おむつ> おむつ代は有料。持ち込みのおむつは廃棄代がかかる場合も

<通院の介助> 緊急時を除き、協力医療機関以外は有料

<胃ろう> 胃ろうサポート費や厨房(ちゅうぼう)管理費をとられる場合も

<買い物の代行> 週1回の指定日は無料、2回目から有料

<理容・美容> 実費を負担

<食器、タオル、ゴミ箱など個人の生活用品> 実費を負担

<NHKの受信料> 実費を負担

■特別養護老人ホームなどの介護保険施設が徴収できる費用の例(東京都の場合)

(「徴収できる費用」も各入居者の希望や選択に基づく必要があり、全員から一律に取ることは原則認められない)

【徴収できる費用】

・歯ブラシや化粧品など個人用の日用品

・ひげそりやせっけんなどをまとめた「日用品セット」

・入居者が希望して参加するクラブ活動(習字やお花など)の材料費

・入居者が持ち込んだ電気製品の電気代

・入居者の好みに応じて出すおやつ

【徴収できない費用と理由】

・談話室などに置いた共用の新聞・雑誌=「介護サービス費」に含まれている

・共用で使うシャンプーやボディソープ=「介護サービス費」に含まれている

・誕生会や節句など施設全体の行事にかかる費用=「介護サービス費」に含まれている

・通院にかかる費用(職員の人件費や交通費を含む)=「介護サービス費」に含まれている

・ゼリーなどの栄養補助食品や、食事にとろみをつける補助剤=「食費」に含まれている

◇「報われぬ国」は原則として月曜日朝刊で連載します。ご意見をメール(keizai@asahi.com)にお寄せください。

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