2015年1月16日 朝刊 東京新聞
東日本大震災で地盤の液状化被害を受けて、国の復興交付金で対策工事を計画している茨城、千葉、埼玉三県の八市のうち七市が、交付金を受けられる二〇一五年度末までの工事終了の見通しが立っていないことが分かった。一六年度以降について復興庁は態度を明らかにせず、財源確保は不透明。各市は「国が求める手続きをすれば、なかなか間に合わない。交付金を打ち切られれば対策工事は難しい」と頭を抱え、住民も困惑している。 (宮本隆康)
液状化が起きた関東八十六自治体の首長連絡会議(事務局・茨城県潮来市)によると、八市は、茨城県潮来、神栖、鹿嶋、稲敷、千葉県浦安、千葉、香取、埼玉県久喜の各市。
対策工事は、地下水を集める管を地中に埋め、地下水位を下げるなどの工法がある。復興交付金などの国予算で賄い、実質的に自治体の負担はない。
ただ、交付を得るには地質調査や、専門家による工法検討委員会の設置、地元住民の三分の二以上の同意が条件。集中復興期間と定めた一五年度までを工事終了期限としている。
住民負担が生じる場合もあり、住民同意の難しさなどから多くの自治体が応急措置にとどめ、巨額の費用がかかる液状化対策は断念した。工事を計画する八市のうち、着工に至ったのは潮来市と神栖市だけ。事業費約二百二十五億円で一三年に着工した潮来市以外、期限内の完了は難しいという。
液状化でへこんだままの道路=15日、茨城県鹿嶋市で潮来市の担当者は「地質調査や実証実験で一年、工法検討委員会で一年ぐらいかかる」と指摘。別の市の担当者は「五年で終わらせるのは非現実的」「ずっと前から『間に合うはずがない』と復興庁に言っている」と語る。
期限に間に合わない場合、浦安市だけは「別の制度で予算確保して工事を進める」としているが、数百億円規模の事業とあって、他の自治体は「交付金がなければ継続は困難」と口をそろえる。
先行き不透明なまま、各市は手続きを進めている。稲敷市は「交付金の打ち切りを言われない限りは進める」といい、千葉市は「住民に同意してもらったのに今さら引き下がれない」と戸惑う。
連絡会議は期限延長を国に要望しているが、復興庁は「一六年度以降の財源は分からない。可能な限り事業を急いでもらいたい」としている。
◆住民困惑「必要だから始めたのに」
液状化対策工事の対象地区では、大半は応急措置で道路などを修復したが、液状化対策と一体で修復するために、そのままにしている場所もある。
自宅前が舗装されていない茨城県鹿嶋市平井地区の自治会役員の男性(65)は二〇一六年度以降の財源確保が不透明なことに「必要だから始めたのに、最後まで責任を持ってもらわなきゃ困る。復興予算をさんざん他の目的に使っておいて、筋が通らない」と話した。
千葉市美浜区では昨年十月、同区磯辺四丁目の「磯辺63自治会」で、地権者二百六十人のうち、三分の二以上の同意を得ることができ、ようやく対策工事に着手する態勢が整った。